あらすじ

前編 母子の金字塔

前編 母子の金字塔

豊田佐吉は慶応3年、湖西で誕生した。伊吉とゑいの子で、長男だった。

伊吉は、社寺建築を手掛ける名工で、二宮尊徳の信奉者だった。ゑいは、日蓮宗に帰依して深い愛情で子供たちを育てた。家は貧しく、ゑいは機織りをして家計を支えた。佐吉は、母親が機織りをする音を聞き流れながら育った。だが安政5年の開港以来、安価な外国製品が流入して、湖西の綿織物は打撃を受けていた。

佐吉は12歳の時、丈夫な身体になろうと岡崎の岩津天満宮詣(往復100キロ)を思い立ち、踏破した。また、尋常小学校を卒業する際に「太平洋の真ん中に大きな島を作る」という作文を書いたが、荒唐無稽だと先生や同級生から失笑された。しかし、ゑいは褒めた。

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後編 病いとの闘い

<後編>病いとの闘い
明治36年、伊藤久八は以前佐吉を騙した男だったが、お人好しの佐吉は許して雇い入れてしまう。しかも艶子という得体の知れない女も入れてしまった。艶子はキツネ顔の美人だった。2人はすぐ問題従業員になる。弟の佐助に招集令状が来た。

明治37年、日露戦争が開戦し、佐助が出征した。佐助を心配する「ゑい」は脳卒中で倒れてしまうが、一命を取り留める。佐助は大怪我をしながらも帰国する。艶子は織機の設計図を盗んで浜松の競合会社「鈴井式織機」に売り渡した。おかげでソックリの製品が出回った。

日露戦争は日本の勝利に終わる。だが、佐吉はイギリス製との性能検査で完敗してしまう。「世界一の織機を発明して、日本人は知恵で劣らねえことを証明してやる」と誓う。

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