中川清徳氏(中川式賃金研究所 所長)

NHKの「大河ドラマ」か「朝ドラ」候補といっても過言ではない

中川清徳有限会社中川式賃金研究所 所長
中川清徳

自動織機といえば「豊田佐吉」、「豊田佐吉」といえば自動織機をスグに思い浮かべる。
それは、小生の小学校の教科書に掲載された、「父親の反対を受けながらも母親の応援があり画期的な機械を発明した」という内容によるものだ。
単なる偉人伝として受け止めたまま、後期高齢者になった。
この著書を読んで単なる成功者ではなく、一人の人間として苦労の連続であったことがわかり尊敬の念が生まれた。

物語は佐吉の誕生から死までを、母「ゑい」の思い出の語り口で綴られてる。
その語り口から「ゑい」の人柄が伝わってくる。

日露戦争や第一次世界大戦などの時代背景を巧みに織り込みながら、人間豊田佐吉が生き生きと繰り広げられる。

従業員の裏切りや契約に無関心で倒産に追い込まれるなど、経営者には他山の石として教訓となる事件が満載である。

成功者の裏に妻の存在が大きいことは枚挙にいとまがない。
豊田佐吉も例外ではない。
事業に専念できたのは後添えの浅子の存在が大きい。

佐吉を支える人物が数々登場するが、敵対的な人物も次々と登場する。
その最大の敵として艶子(女性)が物語を一段と盛り上げている。
いるいる感満載の艶子である。

苦労しつつも大手企業に育った佐吉の会社に大手銀行がにじり寄ってくる。
以前はけんもほろろに追い返された銀行。侮辱されたことを絶対に忘れられない。そこで佐吉が放った言葉が痛快で、溜飲が下がる。

トヨタ自動車の創業者である佐吉の長男、豊田喜一郎が随所に登場するが順風満帆だったのではないことを知った。

全編を通して、小説とは言いながら、実体験をしているような迫力がある。
これはNHKの「大河ドラマ」か「朝ドラ」候補といっても過言ではない。

著者北路透は本名が北見昌朗氏で、名古屋で活躍している社会保険労務士である。社会保険労務士である小生の師である。
歴史に残る著書の出版を祝福したい。