椎野由裕氏(椎野経営技術事務所代表)

北見昌朗と椎野由裕先生

椎野由裕先生は労働安全衛生活動のプロのコンサルタント。北見事務所も先生を講師に招いたセミナーをしています。

その椎野先生がこんな推薦文を下さいました。椎野先生、ありがとうございます。

訪れて佐吉の人生を振り返る歴史巡りをしたくなる

椎野由裕椎野経営技術事務所 代表
椎野由裕

この小説を拝読して豊田佐吉という発明王は、こういう人生を送ったのかと納得しました。

数年前に我が(一社)日本労働安全衛生コンサルタント会愛知支部は、他支部の会員を招いて行う定例勉強会にトヨタ産業技術記念館を選びました。美人のガイドさんが50名ものコンサルタントを引率して、丁寧に、しかも技術的な見地も踏まえて博物館の展示物を説明してくれました。

それまでは豊田自動織機というものがどの程度の発明であったか、そしてトヨタは織機から自動車にどのように事業拡大していったのか、ある程度は知っていましたが、博物館を出てからはこんな凄い地元の名士のことを知らなったなあと反省しました。

豊田自動織機は素晴らしい発明で、それまで佐吉が目標としていたイギリスのメーカーが驚嘆し、その技術力を認めました。佐吉はその企業に特許を売却して巨額の富を得て自動車産業に拡大していきました。見学中に機械設計出身である私は自分の経験と照らし合わせて、スケールの違いにすごいすごいを連発して興奮した記憶がありました。その時から豊田佐吉は一体どんな人生を歩んでいたのか、知りたいという衝動にかられていました。

今回、北路先生の『小説やらまいか』を拝読し、そうなんだと納得しました。これぐらいの大発明をする人は、このくらい個性が強く、周囲に良い意味、悪い意味で影響を与え、上がったり、下がったりの人生を歩むものだと。

この作品は、ビジネスで言うならば商品の開発ストーリー、日本国の経済発展、東海地域の産業史を重ね合わせた流れで、次はどうなるかとページをめくる速度もどんどん上がりました。また、愛が全編にわたって貫かれており、親子愛、兄弟愛、友情、最強は母の愛でした。佐吉の頑張りの源ですね。これに重ねた形で男と女の愛情物語(憎悪もあり)も描かれて分厚いストーリーになっています。母は何にも勝る応援団ですし、良妻に巡り合うこともビジネスではとても大事だとわかりました。

さらに東海地方の読者には、これらの歴史的イベントが行われた場所が現在の地名で紹介されているので、あそこがそんな場所だったのかと発見があり、小説がよりリアルな歴史書になります。一カ所ごと訪れて佐吉の人生を振り返る歴史巡りをしたくなります。お勧めの一書です。