山口悦子氏(西遠労務協会 代表)

佐吉の言葉や行動が読む人を勇気づける

山口悦子西遠労務協会 代表
山口悦子

事実なのか、小説なのか

「小説やらまいか 豊田佐吉傳」を読んだ。

読んでいると、これは小説ではなく事実なのではないか、と混乱してきた。それほどリアルなのである。

おそらく著者は、豊田佐吉のことはもとより、佐吉が生きた時代のこと、関わりのある人達のこと、また方言について、食べ物について等々まで、並々ならぬ熱意と努力で調査検証をおこない、そのうえで事実を生かした小説を書き上げたのではないかと考えられる。

リアルだから面白い。読んでいて飽きない。上巻を読めば続けて下巻を読みたくなる。一緒に注文してよかったと思った。

著者の配慮がありがたかった

読んでいてありがたかったのは、最初の「主な登場人物」「豊田家の家系」「人間関係図」である。「この名前、どんな人だったかな」と混乱したときに、これらを見ればすぐに納得して小説に戻ることができる。

また出来事があった月(場面)ごとに、その内容を表した小タイトルと、佐吉の母“ゑい”の一言語り(要約のようなもの)があるのもありがたかった。

これらは読み手の理解を助けてくれ、おかげで混乱せずに読み進めることができた。著者の、読者への心配りを感じた。

読む人を勇気づける書物である

偉大なことを成し遂げた人は、一般人とは比べ物にならないほどの苦労をし、努力を惜しまず、そしてそれらに心を動かされた人たち(家族・友人・支援者・社員など)に支えられ、助けられ、それらがあってこそ、事をなすことができたのだろうなあ、そんな風に感じた。

「世界のトヨタの始まりの始まり」がリアルにイメージできるだけでなく、佐吉の言葉や行動が読む人を勇気づけ、ハッパをかけ、モチベーションを上げる、「小説やらまいか 豊田佐吉傳」はそんな書物である。