山名敏文氏(5S経営研究所 所長)

山名敏文先生は、いわゆるカイゼンのプロコンサルタント。5S経営研究所を設立されて所長に就任。「利益が出ない、不良が多い、納期が守れない、社員のやる気がない、社員の給料も、経営者の給料も少ない…、このようなお悩みをお持ちの方々に、気が付かないムダを見つけて、収益が出せるように仕向けるコンサル」をされている。その山名先生が推薦文を下さった。

さまざまな困難を乗り越える佐吉の姿に目頭が熱くなる

山名敏文5S経営研究所株式会社 所長
山名敏文

先ず、この本を読み初めて驚いたのが、ゑいの思い出で、その時々の紹介をしているという、私が今まで読んだ自伝小説とは違った構成であったことです。

ゑいが死んだ後も、天国から見たゑいとして、それぞれのエピソードを紹介されているのも、非常にユニークでした。

また、上下巻共に巻の初めに、出てくる人物の紹介、関係(それも、敵対するか、応援してくれるか)をわかりやすく図にしてあることです。これだけのボリュームの本なので、一気に読むことができず、やはり忘れてしまっても、最初のページを開いて確認できるので、確実に理解できました。

また、人物表現をスケッチ画で示されており、本文中の内容が目から再度、確認できるという今までにない本でした。

これらのことが、(725×1,003)版の大きなマップにも表わされており、活動していた名古屋市内の地図に示されたのは、非常にユニークですし、面白い企画でした。普段馴染みのある名古屋市内のどの場所で活動されていたか、そして、今のどの建物になっているのかも調べられているというのは、北路先生がとことん追求される姿と驚きました。

さて、内容ですが、豊田佐助がここまで苦労していても、それを支える人、また、利用して陥れる人と、世間で天才と言われる人 (本人は、努力の賜物であり、才能ではないとの認識ですが)には、足を引っ張る人が必ず出てくるのでしょうが、それを乗り越えていく姿が、何度も、何度も出てきて、そのたびに目頭が熱くなりました。そんな人の努力の結晶が、今のトヨタ自動車の礎になっていたのだと改めて知り、トヨタ自動車を見る目がすっかり変わりました。(史実は正しいのですから、これは正しいのでしょう)

しかし、佐吉と佐吉にまつわる人達の少ない史実は変えずに、このような内容を書かれた北路先生の想像力、創造力には驚きました。そして、その時の歴史的な事実をここまで調べ上げられていることも、本業(?)はどうされていたのかと勝手なことですが、不思議に思ってしまいました。

野鳥も所々で登場させ、それも正しい鳴き方を示されていて、北路先生の博識にも驚きました。

最後に、これは「豊田佐吉」をモデルにした評伝小説だと書かれていても、全く違和感がないために、読み終わって、「豊田佐吉」が、こんな人生だったのかと思ってしまいました。、罪作りな本ですね!!